les signes parmi nous

堀 潤之(Junji HORI) 映画研究・表象文化論

D・W・グリフィス『イントレランス』余話

D. W. グリフィスの最大の野心作『イントレランス』Intolerance (1916)を構成する4つのエピソードのうち、最もまとまった物語を展開している「現代篇」は、数年後にグリフィス自身によって再編集されて、『母親と法律』The Mother and the Law (1919)という…

ストローブの新作『ロボットに対抗するフランス』(2020)に寄せて

以下に訳出するのは、ジャン゠マリ・ストローブの約9分間の新作短篇『ロボットに対抗するフランス』La France contre les robots (2020)で読み上げられている文章である(この短篇は、4月5日にKino Slangで公開され、現在では製作元Belva FilmsのYouTubeチャ…

ペドロ・コスタ監督のトーク採録(出町座)/Entretien avec Pedro Costa (à Demachi-za, Kyoto)

∗La version française suit. 出町座で2019年12月2日(月)に『溶岩の家』Casa de Lava (1994)の特別上映後に行われたペドロ・コスタ監督のトーク(わたしが聞き手・通訳を務めて、フランス語で行われた)を以下に採録する。なお、このトークの大部分は、ラ…

ゴダールの『イメージの本』覚書(1) イントロダクション

以下に掲載するのは、ラジオ関西の30分の番組「シネマキネマ」で2019年4月27日27時から放送された内容のうち、わたしが語った部分の書き起こしである(一部、補足した箇所もある)。 全体がゴダールの新作紹介にあてられたこの回では、『イメージの本』の全…

ロラン・バルトの未邦訳の映画論

ロラン・バルトと映画の関係については、日本では『ロラン・バルト映画論集 (ちくま学芸文庫)』や『映像の修辞学 (ちくま学芸文庫)』といった独自のアンソロジーによって、比較的よく知られていると思う。『戦艦ポチョムキン』のスチル写真を論じた「第三の…

ジョルジョ・アガンベンのゴダール論

岡田温司氏の『アガンベンの身振り』(月曜社、2018年)によれば、ジョルジョ・アガンベンの映画論は6本の短いエッセイに限られる。そのうち、未邦訳にとどまっていたゴダール論をここに訳出する。 このゴダール論は、もともとはベルナール・エイゼンシッツ…

ゴダール新作『イメージの本(Le Livre d'image)』予告篇についての覚書

2018年のカンヌ映画祭に出品されるジャン=リュック・ゴダールの新作『イメージの本(Le Livre d'image)』の予告篇は、それ自体、実験映画のようだ。左右のビープ音と『軽蔑』ラスト付近の音声の引用で始まり、ハンス・オッテの楽曲がサウンドトラックを支…

『アンドレ・バザン研究』第1号の刊行

この春に刊行した『アンドレ・バザン研究』第1号(特集「作家主義再考」、非売品)に、以下の翻訳(解題つき)を寄せた。この研究誌の入手方法も含めた詳細については、アンドレ・バザン研究会の別ブログを参照してほしい。このエントリーでは、わたしが執筆…

アンヌ・ヴィアゼムスキー『彼女のひたむきな12カ月』書評

1966年夏からその翌年にかけてのゴダールとの出会いから結婚までのいきさつを振り返ったアンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説『彼女のひたむきな12カ月』(原正人訳、DU BOOKS、2016年)の書評を、産経新聞に寄せた。ここで読むことができる。彼女のひたむ…

『表象』というメディウム、ほか

今日、ウェブ上に公開された表象文化論学会のニューズレター『REPRE』27に、「『表象』というメディウム」と題した小文を寄せた。『表象09』『表象10』の2号にわたって編集委員長を務めた体験を振り返りつつ、学会誌のあり方についての雑感を綴ったものであ…

特集上映〈ゴダールと政治〉

本日から一週間にわたってポレポレ東中野で開催される特集上映〈ゴダールと政治〉で、ジガ・ヴェルトフ集団期を中心とするゴダール作品が10本まとめて上映され、わたしが執筆した各作品の解説が劇場で配布されることになっている。一作品につき4000字程度の…

ブレッソンの『白夜』

一週間ほど前から、これまで世界のどこでもビデオにもDVDにもなっていないロベール・ブレッソンの『白夜』(1971)が、2012年に本作品をリバイバル公開したエタンチェの制作によって、Blu-ray DISCとしてアマゾン限定で発売されているが、その封入リーフレット…

佐々木敦『ゴダール原論』書評

佐々木敦氏によるゴダール『さらば、愛の言葉よ』(2015)のスリリングな読解の書『ゴダール原論』(新潮社、2016年1月)の書評を、先日『産経新聞』に寄せたのに引き続いて、今日発売される『週刊読書人』にも書いた。前者のものはウェブ上でも読める。 佐々…

ジャック・リヴェット「卑劣さについて」を読む

ついにジャック・リヴェットが亡くなった。2010年にはエリック・ロメールとクロード・シャブロル、2012年にはクリス・マルケル、2014年にはアラン・レネが立て続けに逝去し、ヌーヴェル・ヴァーグの時代を牽引した映画人たちのうち存命なのは、ジャン=リュ…

ゴダールの「反ユダヤ主義」?

今日、ウェブ上に公開された表象文化論学会のニューズレター『REPRE』の第25号に、4月の上旬にミネルヴァ書房から刊行された論集『映画とイデオロギー』(加藤幹郎監修・杉野健太郎編)の紹介文を寄せた。ほぼ同時期に同じ叢書で刊行された『映画とテクノロ…

日本映像学会第41回全国大会のシンポジウム

去る5月30日(土)・31日(日)に京都造形芸術大学で開催された日本映像学会第41回全国大会で、シンポジウム「映画批評・理論の現在を問う――映画・映像のポストメディウム状況について」に登壇したので、忘れないうちにその感想を概要とともに記しておく。な…

ゴダールの最新インタヴュー

2012年創刊のフランスの映画雑誌『Sofilm』の最新号(Mai 2015, nº30)にゴダールのロング・インタヴューが載っている(p.48-60)。インタヴュアーは、編集長のティエリー・ルナス。映画の製作・配給・出版を精力的に手がけているCapricciの創設者のひとりで…

最近執筆した書評

今日、公開された表象文化論学会のニューズレター『REPRE』の第24号に三浦哲哉氏の『映画とは何か フランス映画思想史』の短評を寄せた。なお、本号では小特集「人文系出版の現在」が組まれており、特に3名の独立系編集者による座談会がとても面白い。同じ…

2014年の仕事

いまさらながら、2014年に発表した仕事を備忘を兼ねてまとめておく。昨年、エントリーを立てて報告するのを怠ってしまった事柄としては(それぞれについて、詳しいエントリーを書こうと思っていたのだが、書きかけのまま放置しているうちに年が変わってしま…

ゴダールの『さらば、愛の言葉よ』覚書(3) 『ユリイカ』ゴダール特集号

『さらば、愛の言葉よ』(Adieu au langage, 2014)が2015年1月31日から公開されるのに先だって、「ゴダール2015」特集を組んでいる『ユリイカ』2015年1月号(目次)が先週末に出た(ほとんどの論考が、やはり映画を見てから読むべきものであることを考えると…

ゴダールの『さらば、愛の言葉よ』覚書(2) ゾエ・ブリュノーの撮影日誌

ゴダールの新作『さらば、愛の言葉よ』で映画に初出演した女優ゾエ・ブリュノーが、出演に至るまでの過程も含めて、ゴダールとの撮影がどのように進んだかをつぶさに記した『ゴダールを待ちながら』という本を出している(Zoé Bruneau, En attendant Godard,…

『思想』のデリダ没後10周年特集

今年は没後10年になるということで、ジャック・デリダの研究書や訳書が続々と刊行されている(ちなみに、ゴダールの最新作『さらば、愛の言葉よ』には、先月日本語訳が刊行された『動物を追う、ゆえに私は〈動物で〉ある』〔鵜飼哲訳、筑摩書房〕の一節も引…

3D映画――未来なき発明?

ずいぶん前の話だが、勤務先である関西大学文学部のサイトに、「3D映画――未来なき発明?」と題した小文を寄稿した。ここで読むことができるが、あまり目に付かない場所ということもあり、このブログにも転載しておく。前エントリーでも触れたように、末尾…

ゴダールの『さらば、愛の言葉よ』覚書(1)

今年5月のカンヌ映画祭でお目見えし、北米では10月下旬に封切られるや「スマッシュヒット」を飛ばしているゴダールの3Dによる最新作『Adieu au langage』(2014)が、日本でも来年1月に『さらば、愛の言葉よ』の邦題で公開されることになっている(公式ツ…

『越境の映画史』の刊行

同僚の中国語圏映画の研究者・菅原慶乃氏と編んだ下記の論集が、昨年度末の3月31日に関西大学出版部から刊行された。 堀潤之・菅原慶乃編『越境の映画史』関西大学出版部、2014年3月、総ページ数274頁 越境の映画史 (関西大学東西学術研究所研究叢刊)作者: …

2013年の仕事

2013年は、レフ・マノヴィッチの『ニューメディアの言語』の翻訳を刊行することができた。思えば、このブログを開始する前の2009年頃から断続的に取りかかっていた翻訳である。いや、2001年の原著刊行直後にも翻訳しようかと思って部分的に試訳を作っていた…

クリス・マルケル(1921-2012)関連文献

すでにふた月以上前のことになるが、山形国際ドキュメンタリー映画祭のクリス・マルケル特集のカタログに、以下のエッセイを寄せた。 堀潤之「クリス・マルケルの日本への旅」、東志保・港千尋・小野聖子編『未来の記憶のために クリス・マルケルの旅と闘い…

マノヴィッチ『ニューメディアの言語』関連文献

前エントリーでお知らせしたマノヴィッチの『ニューメディアの言語』の刊行を機に、このエントリーではニューメディア論の関連文献をいくつか挙げておく。ニューメディアの言語―― デジタル時代のアート、デザイン、映画作者: レフ・マノヴィッチ,堀潤之出版…

マノヴィッチ『ニューメディアの言語』の刊行

2009年頃から翻訳に取りかかっていたレフ・マノヴィッチの『ニューメディアの言語』(Lev Manovich, The Language of New Media, Cambridge, Mass.: The MIT Press, 2001)が、ようやくみすず書房から刊行された。おりしもこの夏に、本書の続編とも言えるマ…

フランソワ・トリュフォー論集の刊行

4月下旬にWiley-Blackwellから出版されたダドリー・アンドリューとアンヌ・ジランの編纂によるフランソワ・トリュフォー論集に、「トリュフォーと写真的なもの――映画、フェティシズム、死」と題した論考を寄せた(ちなみに、わたしの章の末尾に「サリー・シ…