les signes parmi nous

堀 潤之(Junji HORI) 映画研究・表象文化論

2014年の仕事

いまさらながら、2014年に発表した仕事を備忘を兼ねてまとめておく。昨年、エントリーを立てて報告するのを怠ってしまった事柄としては(それぞれについて、詳しいエントリーを書こうと思っていたのだが、書きかけのまま放置しているうちに年が変わってしまった)、まず1月には3年前に参加した学会から生まれたゴダール論集(The Legacies of Jean-Luc Godard)が刊行された。このエントリーで紹介した発表のほとんどは論文化されて収められている。

4月に刊行された『表象08』では、特集「ポストメディウム映像のゆくえ」の共同討議に参加するとともに、レイモン・ベルールの翻訳とその解説的な記事を寄せた。ほぼ同時期に出たせんだいメディアテークの『ミルフイユ06』でも、「ポストメディア時代の映像」と題して、門林岳史氏(上記の特集の仕掛け人)と三浦哲哉氏が討議を行っている。表象文化論学会のニューズレターRepreの21号でも、「ポスト・ミュージアム・アート」という小特集が組まれており、とりわけ古畑百合子氏の非常に見通しのよい研究ノートは『表象08』の特集とも密接に関連する。

11月にはこのところ熱中していたクリス・マルケルについての二本目の論考を収録したマルケル論集(金子遊・東志保編『クリス・マルケル 遊動と闘争のシネアスト』、森話社、2014年)が刊行された(マルケルについてのもう一本の拙稿は『越境の映画史』に含まれている。またマルケルに関してはこのエントリーも参照)。

ところで、一昨年は勤務校の関西大学表象文化論学会の第8回大会を開催したが、昨年は学会誌『表象』の編集委員長を仰せ付かり、その編集作業に随伴することとなった。執筆者の皆さんと編集委員の尽力によって、4月刊行予定の『表象09』は目下のところ、最後の詰めの段階を迎えており、遠からず目次も公開できるはずだ。

すでに概要にも出ているとおり、メイン特集は「音と聴取のアルケオロジー」。福田貴成氏の司会による共同討議や彼自身の論考に加えて、ジョナサン・スターンやスティーヴン・コナーの論考も掲載する。小特集は「マンガ「超」講義――メディア・ガジェット・ノスタルジー」で、タイトルから予想できるように、石岡良治氏の『視覚文化「超」講義』の番外篇としてマンガを論じたもの。昨年秋の新潟大学での研究発表集会での書評パネルを元にした共同討議を収録している。

厳正な査読を経た4本の投稿論文、および9冊におよぶ書評とあわせて、充実した誌面になっていると思うので、刊行の暁にはぜひ手にとっていただきたいと願っている。


編著書

『越境の映画史』、編著(6人)堀潤之(編著)、菅原慶乃(編著)、西村正男、大傍正規、韓英麗、竹峰義和、関西大学出版部、2014年3月
担当:「はじめに」5-14頁、「「東洋」から遠く離れて――クリス・マルケルによる中国・北朝鮮・日本」211-260頁(総ページ数274頁) 【関連エントリー

論文など

The Legacies of Jean-Luc Godard (Film and Media Studies)

The Legacies of Jean-Luc Godard (Film and Media Studies)

  • 「ベルールの反時代的考察――「35年後――「見出せないテクスト」再考」の余白に」、『表象08』、表象文化論学会、2014年、94-99頁

表象〈08〉

表象〈08〉

クリス・マルケル 遊動と闘争のシネアスト

クリス・マルケル 遊動と闘争のシネアスト

解説・書評・短評など
  • ゾエ・ブリュノー「ゴダールを待ちながら」(訳=長野督/解説=堀潤之)、『ユリイカ』2015年1月号、112-128頁
口頭発表など
  • 共同討議「ポストメディウム理論と映像の現在」(加治屋健司/北野圭介/堀潤之/前川修/門林岳史)、『表象08』、表象文化論学会、2014年、18-45頁
翻訳
  • レイモン・ベルール「35年後──「見出せないテクスト」再考」、『表象08』、表象文化論学会、2014年3月、78-93頁
  • アルチュール・マス/マルシアル・ピザニ(堀潤之訳)「ほとんど無限の対話――『さらば、愛の言葉よ』について」、『ユリイカ』2015年1月号、179-192頁