les signes parmi nous

堀 潤之(Junji HORI) 映画研究・表象文化論

2013年の仕事

2013年は、レフ・マノヴィッチの『ニューメディアの言語』の翻訳を刊行することができた。思えば、このブログを開始する前の2009年頃から断続的に取りかかっていた翻訳である。いや、2001年の原著刊行直後にも翻訳しようかと思って部分的に試訳を作っていたりもするので、本書との付き合いはかなり長い。さらに言えば、マノヴィッチ自身がくぐり抜けてきて、非常に強いこだわりを持っているとおぼしき1980年代半ばから90年代にかけてのコンピュータ文化は、「訳者あとがき」にも少し記したように、わたしにとっても、個人的な体験と結びついた強い思い入れのある文化なのだ。その意味でも、本書を訳出することができて嬉しく思っている。

他方で、2013年はわたしにとって比較的新しい興味の対象であるクリス・マルケルに熱中した年でもあった(この熱中はまだまだ続く予定)。山形国際ドキュメンタリー映画祭の特集でも多数の作品が上映され、特に2時間半を超えるドキュメンタリー作品『美しき5月』(1962)は、神業とも言える翻訳の巧みさも手伝って、じつに印象深い上映体験となった。マルケル作品のDVDを日本で出すのはむずかしいと思うが(主に脳を直撃されるようなあの濃密な情報量を字幕では処理しがたいため)、機会があればぜひ協力したいと思う。

また、昨年は6月末に表象文化論学会第8回大会関西大学で開催した。小規模な学会とはいえ、開催校ともなると雑事に忙殺されて、研究発表がほとんど聞けなかったのは残念だが、地方開催にもかかわらず盛況だったのは嬉しいことだ。また、わたしがメインで準備した企画として、アーティストの小泉明郎さんをお招きして、迫力のある、物議を醸しもしたパフォーマンス《Autopsychobabble #4》を教室という特殊な空間で演じていただき、また制作についてもお話をうかがえたのは貴重な体験だった。なお、同僚の門林岳史氏を中心に企画されたシンポジウム「映像のポストメディウム的条件」は、多少、姿を変えて、春に刊行される次号の『表象』で改めて展開されることになっているので期待されたい。

論文など

A Companion to François Truffaut (Wiley Blackwell Companions to Film Directors)

A Companion to François Truffaut (Wiley Blackwell Companions to Film Directors)

解説・書評・短評など
口頭発表など
翻訳

ニューメディアの言語―― デジタル時代のアート、デザイン、映画

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