2012年の仕事
毎年1月中には公開しているので今年はすっかり時期を逸してしまった感があるが、2012年(2012年度ではなく)に発表した仕事を備忘を兼ねてまとめておく。
これまで何か発表するたびに、告知もかねて新たなエントリーを立て、書誌情報くらいはその都度記してきたのだが、昨年はあまりにも忙しく、いくつかの項目に関しては今回初めてブログにお目見えすることとなった。
短い佐藤真論が収められた論集Cinéma, critique des imagesは、イタリアの出版社から出ていることもあり(使用されている言語はフランス語と英語)、手軽なルートでは入手しがたいが、「映画と現代美術」を総合テーマにしたゆるやかな論集シリーズとしては、前身のCinema & Cie誌の何冊かの特集号を除いても6冊目となり(他の5冊の書誌情報は以下の通り)、この領域でどんなことが論じられているかを見渡すには有益な文献である。
- Elena Biserna, Precious Brown (dir.), Cinéma, Architecture, Dispositif, Campanotto, 2011.
- Philippe Dubois, Elena Biserna, Frédéric Monvoisin (dir), Extended Cinema: Le cinéma gagne du terrain, Campanotto, 2010.
- Alice Autelitano (ed.), The Cinematic Experience: Film, Contemporary Art, Museum, Campanotto, 2010.
- Philippe Dubois, Lucia Ramos Monteiro, Alessandro Bordina (dir), Oui, c'est du cinéma, Campanotto, 2009.
- Cosetta G. Saba, Cristiano Poian (ed.), Unstable Cinema: Film and Contemporary Visual Arts, Campanotto, 2007.
また、神戸映画資料館でのハルーン・ファロッキについての講演は、告知も報告もせず、やりっ放しになってしまった。ナチス・ドイツ占領下のオランダに置かれていたヴェステルボルク通過収容所で1944年に撮られた16ミリのフッテージを再構成した『猶予期間』という40分の作品に、日本語字幕を付けて上映し、引き続いて、ファロッキのキャリア全体を通覧しつつ特に『猶予期間』について解説を加えるという、それなりの労力をかけたイベントだったので、何らかの形で文章化したいものである。『猶予期間』は静かで慎ましくも思慮に充ちた作品であり、日本語字幕データもあるので、またどこかで上映の機会があることを願いたい。
論文など
- 堀潤之「映画は音楽のように――日本におけるジャン=リュック・ゴダール作品の受容についてのささやかな覚書」、『東西学術研究所紀要』第45輯、2012年4月2日、163–177頁 【関連エントリー】 【全文】
- "La puissance de la photographie : À propos de deux films de Makoto Sato", in Claudia d'Alonzo, Ken Slock, Philippe Dubois (dir.), Cinéma, critique des images, Udine: Campanotto, avril 2012, pp.185-192. (ISBN:9788845612886) 【関連エントリー】
書評・短評など
- 「ゴダール 1968–1972」、『ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 Blu-ray BOX』パンフレット、2012年5月、10–11頁【関連エントリー】
- 現代美術用語辞典ver.2.0版の以下のエントリー(ベーラ・バラージュ『視覚的人間』/ルドルフ・アルンハイム『芸術としての映画』/トム・ガニング「アトラクションの映画」/レフ・マノヴィッチ『ニューメディアの言語』 【関連エントリー】