les signes parmi nous

堀 潤之(Junji HORI) 映画研究・表象文化論

『ゴダール・ソシアリスム』関連資料(3) AUDIOS

ゴダール・ソシアリスム』関連資料(3) AUDIOSとして、引用されている音楽の一覧を載せる。ただし、TEXTOS、VIDEOSと比べると、調査があまり行き届いておらず、しかも映画の中で印象的に使われているのにクレジットされていないものも多い。特に第2楽章で使われているいくつかの叙情的なクラシック曲——しかも、それらは『映画史』前半の頃までの断片的な使い方ではなく、全体もしくはそれに近いほど長く使われている——が特定できていないのは残念だ(まあとりわけ音楽に関しては、分かったところでどうということはないのだが)。

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なお、よく知られているように、ゴダール作品の音楽はほとんどがマンフレート・アイヒャー率いるレーベルであるECMのアルバムが用いられているので*1、曲名の箇所には、引用源と思われるアルバムへのリンクを貼ってある。また、[※35]などとある箇所に関しては、劇場パンフレットのシナリオ採録の該当する番号の注釈により詳しい説明があるため、そちらを参照して欲しい(関連資料(1)TEXTOS(2)VIDEOSもご参照ください)。以下、リストを掲げる。
AUDIOS

作曲家名 登場箇所 曲名
ベティ・オリヴェロ 全体 Neharót Neharót》。随所で用いられており、本作の通奏低音を成す曲と言ってよいだろう。
アルヴォ・ペルト 第2楽章(末尾の字幕部分、ベティ・オリヴェロとかぶさる合唱曲) In Principio》第1楽章
アヌアール・ブラヘム 第1楽章(エジプトの箇所) The Lover of Beirut》(この曲を含むアルバムはマフムード・ダルウィーシュに捧げられている)
トマシュ・スタンコ Litania》は『映画史』で使われているのだが…
ルフレート・シュニトケ 第2楽章(父親とフロリーヌ) Psalms of Repentance》の第1曲(末尾)
パコ・イバニェス 第1/3楽章(バルセロナ 《フリアにおくる言葉》[※35]
ベルント・アロイス・ツィンマーマン 第3楽章 《Musique pour les soupers du roi Ubu》(66)の末尾(ストローブ/ユイレ『アンティゴネ』より)
ギヤ・カンチェリ 第1/3楽章 第1楽章で《ABII NE VIDEREM》の文字が出る箇所の音楽は、間違いなくカンチェリのはずだが、同名の曲ではない。第3楽章の各パートの区切りを成すかのようなピアノの強打音(『決別』や『映画史』でおなじみの)は、《風は泣いている》の冒頭。
ヴェルナー・ピルヒナー 第2楽章(ベンチで棒を振り回すリュシアン) 《Soirée Tyrolienne》の1: FINE-Intrada。『映画史』などでも使われているアルバム《EU》より。
エルンスト・ブッシュ 第3楽章(バルセロナ 《4人の将軍》[※83]
ティエリー・マシュエル 第3楽章(オデッサ?) 関係筋の話によると、オデッサの箇所のオルガン曲らしい。既存の曲ではなく、ゴダール作品(『子供たちはロシア風に遊ぶ』『映画史』でも使われている)のために作られたのかもしれない。
ベートーヴェン 第2楽章(洗面所の母親とフロリーヌ) ピアノソナタ第8番《悲愴》第2楽章
チェット・ベイカー
バルバラ 第1楽章(美術ギャラリー) 《ゲッティンゲン》(65)。これはほとんどオヤジギャグのような使い方。
ガブリエラ・フェリ 第1/3楽章(ナポリ 「ニエンテ・トゥット」という叫びのはず。詳細不明。
ジョーン・バエズ 第3楽章(パレスチナ 《花はどこへ行った?》[※68]
アラン・バシュン+クロエ・モンス 第3楽章(パレスチナ 《雅歌》[※62]
ミーナ 第1楽章 《コンチェルトを想像してごらん》(75)

*1:それについては、ローラン・ジュリエによる英語論文(For Ever Godard所収)がある。未発表のフランス語版は著者のウェブサイトで読める。