les signes parmi nous

堀 潤之(Junji HORI) 映画研究・表象文化論

ジャック・ランシエールの『イメージの運命』

 ジャック・ランシエールの『イメージの運命』(Jacques Rancière, Le Destin des images, La Fabrique, 2003)が、3月18日配本予定で平凡社から出版されることになった。

イメージの運命

イメージの運命

 翻訳というのは7、8合目あたりまでは容易に進むものだが、その後の詰めの作業に、それまでと同じくらいの労力がかかる。本書も粗い訳はかなり以前から用意できていたのだが、細かな疑問点を撲滅するためのまとまった時間がなかなか取れなかった。だが、原著刊行からもかなり日が経ち、書肆からのプレッシャーがかかったこともあって、2009年の最後の四半期をほぼまるまる費やして、なんとか完成にこぎ着けることができた。

 さて、タイトルからも予想できるように、本書は芸術論であり、全体を通じて数多くの芸術作品が取り上げられている。バルザックフローベール、ゾラ、マラルメなどの19世紀の文学、グルーズやシャルダンゴーギャンの絵画、アーツ・アンド・クラフツ運動やドイツ工作連盟によるデザイン、さらには《ここにある》〔Voici〕や《そこにある》〔Voilà〕といった2000年代の大規模な現代美術展、ビル・ヴィオラの大がかりな映像インスタレーション作品(Going Forth by Day, 2002)、ランズマンの『ショアー』(Shoah, 1985)、ゴダールの『映画史』(Histoire(s) du cinéma, 1988-98)などである。

 ランシエールの記述は、これらの流れや作品について、読者に一通りの知識があることを前提にしている。しかし、本書には、図版が1枚(『映画史』4Bのスチル写真)しかない。それによって本書の理解が困難になっているということはないが、図版はあるに越したことはない(むろん、Traficのようにあえて図版を載せない映画雑誌もあるが、本書にそのような意図はおそらくないだろう)。そこで、訳出作業中に参考資料として集めた図版その他を、近いうちに、問題のなさそうな範囲でここに公開することにする。といっても、いくつかの肝心な図版を紛失したりして、大したものはないのだが、まずは予告まで。

ジャック・ランシエール『イメージの運命』目次

I.イメージの運命

  イメージの他性
  イメージ、類似性、原‐類似性
  あるイメージ性の体制から別の体制へ
  イメージの終焉は私たちの背後にある
  剥き出しのイメージ、直示的なイメージ、変成的なイメージ

II.文章、イメージ、歴史

  共通の尺度なしに?
  文章‐イメージと大並列
  家政婦、ユダヤ人の子供、教授
  弁証法モンタージュ、象徴的モンタージュ

III.テクストの中の絵画

IV.デザインの表面

V.表象不可能なものがあるのかどうか

  表象が意味するもの
  反‐表象が意味するもの
  非人間的なものの表象
  表象不可能なものの思弁的な誇張