ジャック・ランシエールの『イメージの運命』
ジャック・ランシエールの『イメージの運命』(Jacques Rancière, Le Destin des images, La Fabrique, 2003)が、3月18日配本予定で平凡社から出版されることになった。
- 作者: ジャックランシエール,Jacques Ranci`ere,堀潤之
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 97回
- この商品を含むブログ (16件) を見る
翻訳というのは7、8合目あたりまでは容易に進むものだが、その後の詰めの作業に、それまでと同じくらいの労力がかかる。本書も粗い訳はかなり以前から用意できていたのだが、細かな疑問点を撲滅するためのまとまった時間がなかなか取れなかった。だが、原著刊行からもかなり日が経ち、書肆からのプレッシャーがかかったこともあって、2009年の最後の四半期をほぼまるまる費やして、なんとか完成にこぎ着けることができた。
さて、タイトルからも予想できるように、本書は芸術論であり、全体を通じて数多くの芸術作品が取り上げられている。バルザック、フローベール、ゾラ、マラルメなどの19世紀の文学、グルーズやシャルダンやゴーギャンの絵画、アーツ・アンド・クラフツ運動やドイツ工作連盟によるデザイン、さらには《ここにある》〔Voici〕や《そこにある》〔Voilà〕といった2000年代の大規模な現代美術展、ビル・ヴィオラの大がかりな映像インスタレーション作品(Going Forth by Day, 2002)、ランズマンの『ショアー』(Shoah, 1985)、ゴダールの『映画史』(Histoire(s) du cinéma, 1988-98)などである。
ランシエールの記述は、これらの流れや作品について、読者に一通りの知識があることを前提にしている。しかし、本書には、図版が1枚(『映画史』4Bのスチル写真)しかない。それによって本書の理解が困難になっているということはないが、図版はあるに越したことはない(むろん、Traficのようにあえて図版を載せない映画雑誌もあるが、本書にそのような意図はおそらくないだろう)。そこで、訳出作業中に参考資料として集めた図版その他を、近いうちに、問題のなさそうな範囲でここに公開することにする。といっても、いくつかの肝心な図版を紛失したりして、大したものはないのだが、まずは予告まで。